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春の感染症

りんご病(伝染性紅斑)

症状
発疹が出る前に、微熱をはじめとした風邪の症状が出ます(全く発熱しない場合もあります)。その後、りんごのように頬が真っ赤になり、手足に発疹が出るのが主な症状。正式には「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」という病気です。
頬の赤みは、「手でたたかれたような」と表現されることが多くあり、赤くなっているところと通常の肌色の境界がはっきりしていて、赤みがとても強い紅斑であるのが特徴です。一方で手足の発疹は、「レース状」と呼ばれるうっすらとした発疹であるのが特徴です。
原因
ヒトパルボウイルスB19というウイルスによる感染です。接触による感染や、鼻水や咳、くしゃみなどの飛沫で感染します。
治療と対策
原因となるウイルスに対してのワクチンはありません。頬に発疹が出てりんご病と診断がつく頃には、風邪の症状は落ち着いていることも多くあります。感染力も落ちていることが多いです。
発疹がかゆみを伴うこともあるので、その場合は冷やしたり、処方されたかゆみ止めを塗ってあげることで緩和してあげましょう。
熱が下がっていれば保育園に登園可能です。
注意点
赤ちゃんや妊婦さんが感染すると危険です。妊娠初期にかかると胎児に異常がでたり流産したりする危険があります。妊婦さんにとって、流行時期は十分に注意が必要です。上の子が感染したなど接触が疑われるママは産科で相談しましょう。

マイコプラズマ

症状
軽い咳からはじまり、重度になると肺炎を引き起こすこともある病気です。小学校以上の学童に発症しやすい病気ですが、それ以下の年齢でも感染することがあります。「熱がないからマイコプラズマではない」とは言えません。咳き込みがひどくなると、夜も眠れなくなる事があり、肺炎になる場合は入院が必要となります。
原因
マイコプラズマという微生物です。細菌に近い特徴があるので、抗生物質が有効なことがありますが、耐性菌も多く、効かないこともあります。自然に良くなることもあれば、抗生物質を使っていても入院になってしまうこともあるバリエーションが広い病気です。
飛沫感染が主ですが、潜伏期が2~3週間程度と長い感染症です。家庭内で誰かがかかったその2~3週間後に、別の家族がなるということもあります。
対策
咳がつらいことが多い病気なので、咳の対策がケアのメインです。咳き込みがつらいことが多いので、空気が乾燥していたら加湿するのもいいです。咳のケア
[家庭内感染はこう防ぐ]
飛沫感染でうつる病気です。手洗いうがいの徹底や、マスクをするなどの対策を心がけましょう。接触感染もありうるので、感染者とお風呂や寝室を分けると、より効果的です。
注意点
マイコプラズマは喉から検体を取ったり血液で診断をする病気ですが、診断精度がそこまで高くなく、確定診断を確実にするのは難しい病気のひとつです。診断を検査に頼らず、医師の判断で診断することも多いです。

夏の感染症

RSウイルス

生後1歳までにほぼ半数の子どもが感染し、2~3歳までにほぼ全ての子どもが経験する乳幼児の代表的な疾患です。秋から冬の感染症でしたが、ここ数年は夏に流行しています。0歳、特に生後半年くらいまでの赤ちゃんがかかると重症化することがあるため、小さい赤ちゃんの鼻水、ゼイゼイでは気をつけたい病気です。

症状
咳、鼻水がメインの風邪症状が出ます。他の風邪に比べて、鼻水が多いのが特徴です。大人がかかると軽い風邪で済むことが多い場合や、「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」といって感染していても症状が出ない人もいます。2歳未満の小さな子では、喘息のようなゼイゼイとした呼吸や鼻水、鼻づまりの症状が出ることも多いので注意が必要です。そのような症状が出ると、呼吸が苦しくなって寝られなくなったり、おっぱいやミルクが飲めなくなったりします。
特に生後半年までの赤ちゃんでは症状がひどくなることが多く、細気管支炎、肺炎の症状が出ると入院が必要な場合も多いです。症状が出始めて4~5日くらいが症状のピークがきます。ピークを越えても小さな子だと咳や鼻水が長引く場合があります。
原因
「RSウイルス」という、風邪の一種のウイルスが原因です。残念ながら、一度かかると免疫がつくということはなく、複数回感染していしまいます。接触、飛沫で感染します。
治療と対策
特にRSウイルスに効く特効薬はなく、「対症療法」といって症状に対する治療をしながら本人の力で治していくしかない病気です。鼻水が多い病気なので、こまめに鼻水をとってあげると、子ども自身は楽になります。呼吸が苦しくないようであれば、鼻かみや拭いてあげるだけでいいですが、咳がひどかったり鼻づまりで苦しそうな場合は、鼻水を吸ってあげましょう。特に「食事の前」「お風呂の後」「寝る前」に鼻水を吸ってあげると有効です。鼻水のケア
食事は食べられるものをあげましょう。 咳がひどい場合は、少し固めの食事だと咳き込みの刺激で吐いてしまう事があるので、やわらかく食べやすい食事を心がけてください。雑炊やうどん、子どもが好きなゼリーなどでもいいでしょう。
お風呂は、熱がなくて元気があれば普通に入浴して大丈夫です。ただ、咳が多いときは体が温まると咳がひどくなることがあるので、シャワーで済ませたほうがいいかもしれません。 登園は、熱が下がって食事が食べられて、ある程度咳鼻水が落ちついてきたら可能です。
注意点
親から赤ちゃんにうつしてしまうこと!
親は軽い風邪だと思っていたのに、赤ちゃんに感染したらとても悪くなってしまった…ということが少なくありません。特に生後すぐの赤ちゃんがいるご家庭は、「親の健康管理と感染対策」はとても大事です!

プール熱

夏によくなるアデノウイルス感染症の1種です。アデノウイルス自体熱が長引くことがあるのと、プール熱は目にもつらい症状が出るので気をつけたいですね。

症状
発熱から始まることが多い感染症です。特徴的なのは、目とノドが真っ赤になる症状。特に目の症状が強く、片目ずつ目やにが出たり、下まぶたの内側が赤くなるというケースが多いようです。
熱が長引くのも特徴のひとつで、5日ほど続く場合もあります。
原因
「アデノウイルス」が原因です。アデノウイルスはたくさん型がありますが、そのなかでもプール熱(咽頭結膜熱)と流行性角結膜炎(はやり目)は、目の炎症を引き起こすため“タチが悪い”病気とされています。
とくに咽頭結膜熱は、プールの水を介して流行が拡大することが多く「プール熱」と呼ばれています。年間を通して発生しますが、園や学校でプールがスタートする6月末頃から夏季にかけて流行することが多い病気です。
アデノウィルスは真夏の流行シーズンにはいくつかの型が同時に流行ることもあるため、一度かかったとしても、またかかる場合も少なくありません。
治療と対策
こちらも手足口病・ヘルパンギーナ同様、病気自体に効く特効薬はありません。熱を下げる解熱剤をうまく使い、できるだけ安静にしておくことが必要です。

プール熱は、高熱が続く場合が多いので、自宅でできることといえば、よく体を冷やすこと。よく聞かれるのが「冷却シート」の効果についてなのですが、これは実は、解熱効果はないというのが立証されています。さらに、おでこに貼ったものが寝返りなどでずれてしまい窒息の恐れもあるので、私は推奨しません。特に、0歳~1歳の子には使用を控えてください。熱のケア

体を冷やすのには、昔ながらの氷まくらをオススメしています。ワキのした、首のうしろなどを冷やすと効果的です。

目の炎症は、症状によっては目薬が処方されます。目やにや結膜炎(充血)には抗生剤やステロイドの点眼薬を、かゆみには、抗ヒスタミン薬やステロイドの点眼薬を使用することで、対処します。

小さな子どもは目薬を嫌がる子が多いので、コツをつかんで素早く処方を。ママのひざに頭を置いて仰向けに寝転がらせ、目をつぶらせた状態で下まぶたを少しこじ開けるようにして素早くさしましょう。目薬をさしたら「治る魔法だよ、“1.2.3.4.5”」と5秒ほど数えてあげるのもいいかもしれませんね。 ノドの痛みがある場合も多いので、食べたがらない子もいます。できるだけ刺激が強いものは控え、うどんや冷めたスープなど、のどごしのよいものを食べさせてあげましょう。目薬のさしかた

また、脱水症状にならないように水分はしっかりと摂取させましょう。ジュースでも構いませんが、刺激の少ない味のものがベターです。水分摂取の方法

アデノウイルスの感染力はとても強いので、手洗い・うがいをしっかりと行うことでウイルスを体内に入れないようにしましょう。

主な感染は、飛沫感染と接触感染によります。ここで注意したいのは、「接触感染」。ハンカチやタオルの共有は避け、目やにの処理などは、ティッシュや除菌シートなどの使い捨てのものでふき取ってすぐ捨てましょう。付着したタオルは洗濯機で洗っても感染する恐れがあるので、分けて洗濯を。感染した子どもが触ったおもちゃやドアノブは、できるだけ消毒をすると、より感染を防ぐことができます。
お母さんは、おむつの取扱いにも十分注意。おむつは手袋をつけて交換して、その後は流水・石けんでしっかりと手洗いをしましょう。
注意点
登園の目安は「5日~」発熱や、目・ノドなどの主な症状がおさまってから2日経過するまでは出席停止とされています。多くの場合、治癒して再度登園する際には、医師が記載した登園許可証が必要になることが多いです。

手足口病、ヘルパンギーナ

夏の感染症の代表、手足口病とヘルパンギーナ。症状が2つはよく似ています。

症状
[手足口病]
その病名の通り、「手・足・口」に発疹が出ます。手は手のひらに、足は足の裏だけという子もいれば、おしりにかけてまで広範囲に出る子もいます。口は口のまわりを中心に発疹が出る子もいます。このように軽度の子と重度の子で出る範囲は大きく違います。さらに、口の中に口内炎ができるので食事や飲み物を受けつけなくなり、脱水症状になる場合もあります。発熱は1~2日、長くて3日ほど。発熱しない場合もあります。感染するのは、5歳未満の小児が80%を占めますが、大人も感染することがあります。
[ヘルパンギーナ]
「手足口病」の症状ととてもよく似ていますが、手足には発疹は出ず、口内炎のみです。
原因
二つの症状は似ていますが、手足口病の原因ウイルスは「エンテロウイルス」と「コクサッキーウイルス」。一方、ヘルパンギーナは「コクサッキーウイルスA群」が原因。ウイルスの型がいくつかあるので、何度もかかってしまうことも珍しくありません。ウイルスによっては重い症状のものもあるから、去年より今回のほうが重かったという場合もあります。
治療と対策
病気自体に効く特効薬はないので、基本的には熱を下げる解熱剤くらいです。いずれも口内炎の影響で食欲が落ちることが多いので、栄養バランスは気にせずに、子どもが食べられるものをとにかく食べさせてあげましょう。いつも好んで食べるゼリーやプリン、アイスなどでもいいでしょう。食べたくない場合は、無理に食べさせる必要はありません。ただし、脱水になるのを防ぐために、水分はしっかりと摂取させましょう。いつもは糖分の取りすぎや虫歯が気になり控えめにするジュースも、このときばかりはカロリー源。進んで飲ませて構いません。水分が取れず脱水になるほどひどい場合は、入院して点滴対応する場合もあります。
いずれの病気も飛沫感染で移る病気です。同じ部屋にいると、感染する可能性が高いです。マスクなどをすることで、感染する確率を減らすことはできますが、完全に隔離することが大切です。

登園の基準は、熱が出る子も出ない子もいるので、どこからが感染しない状態かという定義づけが難しい病気でもあり、熱が下がってごはんが食べられるようになったら登園可能とされる場合もあれば、発疹がなくなり完全に乾くまでは登園不可とされる場合も。

登園の目安や登園許可証の要不要は、園やかかりつけ医に確認しましょう。
注意点
大人は免疫ができているので感染しづらいですが、手足口病は大人がかかると重症になると言われ、足の裏の発疹が痛くて歩くのが困難になる場合もあります。

秋の感染症

ヒトメタニューモウイルス

症状
“2歳までに約半数、10歳までにほぼ全員”という高い確率で感染するとも言われている機動感染症です。
症状としては、熱、咳、鼻水など普通の風邪と同じ。普通は1週間程度で良くなり、熱が出ないこともあります。

この病気の一番注意すべきところは、気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症を引き起こすこともあるということ。年齢が低いと、喘鳴(ぜいめい)といって、呼吸をするときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」というような音がする状態に重症化することもあります。 発熱や咳が続く場合は気管支炎や肺炎の可能性も考えられるので、速やかに受診をしましょう。
原因
ヒトメタニューモウイルスというウイルスによる感染で、接触による感染や、鼻水や咳、くしゃみなどの飛沫で感染します。春先~初夏に感染することが多いと言われています。
治療と対策
風邪のケアと同じく安静にすることが一番。
通常の風邪と同じく、安静にして療養するのが基本です。食欲がなければ無理して食べさせなくてもいいでしょう。そのかわり、水分摂取はこまめにしたいものです。熱があるときは体を冷やしてあげると楽になります。お風呂に入ると体力を消耗しやすいので、なるべくお風呂は控えましょう。
咳がひどくなる病気です。そのため寝るときに室内を加湿することを心がけましょう。また、枕を高めにして寝ると咳が楽になることがあります。咳がひどい場合は薬を処方してもらうことをオススメしますが、最近では薬の咳止めよりも、ハチミツをなめた方が咳にいいという論文もあります(ただし、ハチミツが摂取できるのは満1歳をすぎてから)。市販の咳ケア用品もうまく使いながら、咳をやわらげてあげるといいですね。咳のケア

家庭内での感染予防は飛沫感染なので、近づかないことが一番の感染予防です。
兄弟がいる場合は別の部屋で寝るなどすると、感染率がぐっと下がります。

登園基準が明確に決まっている病気ではありません。熱が下がって食事がとれて、咳がひどくなければ登園可能です。
注意点
ヒトメタニューモウイルスは、ここ数年で検査されるようになったウイルスです。風邪と症状が同じなので、検査して診断をしないまま治療をされることがほとんどです。ただし、ヒトメタニューモウイルスの特効薬はないので、診断されることはさほど重要ではありません。診断を受けても受けなくても、鼻水を吸ってあげたり咳のケアをしてあげたりという基本的なケアで乗り切りましょう。咳が重症化しやすい病気なので、経過を注意深く見守ることが大切です。

ノロ、ロタウイルス胃腸炎

症状
胃腸炎の主な症状は「嘔吐と下痢」です。
ノロウイルスに比べてロタウイルスの方が症状が激しいと言われており、多い場合では、1日に10回も20回も嘔吐してしまうことがあります。ノロウイルスの場合でも、嘔吐下痢を繰り返して脱水症状を起こすことがあるため、注意が必要です。
発熱はする場合としない場合があり、腹痛が出ることもあります。
大人に比べて子どもの方が症状が重い傾向にありますが、大人の場合でも脱水症状を起こすことがあります。家族の中の誰かがかかったら家庭内感染しやすいです。
原因
ノロウイルス、ロタウイルスというウイルスが原因です。ノロウイルス、ロタウイルスともに検出する検査がありますが、ノロウイルスは検査できる人が限られていますし、全部のノロウイルスを検出できる訳でもないので、症状で診断することが多いです。
どちらも感染力が強く、ロタウイルスに関しては、生後6ヶ月から2歳をピークに、5歳までにほぼすべての子どもが感染すると言われるほどです。ノロウイルスは、食品が原因で感染するいわゆる「食中毒」が原因であることも多くあります。
治療と対策
特効薬はなく、自然経過でみていきます。下痢に関しては、下痢止めの薬を使って無理に止めてしまうと、下痢を介してウイルスを排出することを止めてしまうため、下痢止めは通常では使いません。
嘔吐に関しては、嘔吐によって体のミネラルバランスが崩れてしまうこともあるので、症状に応じて吐き気どめの薬を使うことがあります。
嘔吐や気持ち悪いなどの症状があるときは、無理に食事をとらなくても大丈夫です。嘔吐をした後は1時間くらいは何も口にしないのがいいでしょう。少し落ちついたら、水分を「一口ずつ」など、ごく少量ずつから摂取してみましょう。水分接種の方法
脱水症状を気にして無理に水を飲ませては、また嘔吐してしまう…というのでは逆効果です。嘔吐を数回繰り返したとしても、すぐには脱水にならないことが多いので、慌てて水分を取らなくても大丈夫です。逆に、嘔吐が1-2回でも脱水になる子もいるので、ぐったり感が強ければ受診しましょう。
食事開始のタイミングは「お腹が減ってから」で大丈夫です。嘔吐が激しいのは、症状が出てから半日~2日程度なので、食事がとれなくても、心配しすぎる必要はありません。お子さんによっては「お腹は空くけど食べると吐いてしまう」という子もいます。そのような場合はお腹が空いたと訴えがあっても嘔吐を繰り返すようなら、食事は半日ガマンしましょう。

便や嘔吐物から感染します。とはいえ、度重なるオムツや嘔吐物の処理が必要となってくるのがこの病気です。処理をするときは必ず手袋をしてから行い、処理後は石けんを使い流水で手洗いすることで、ウイルスをしっかり洗い流す事が大事です。

トイレのドアノブなどにもウイルスが付着し、そこから感染をする事もあります。アルコールでは消毒できませんが、次亜塩素酸ナトリウムを含んでいる消毒液は効果があります。
嘔吐がなくなり食事が食べられるようになって、下痢もなくなったら登園が可能です。「下痢がなくなったら」と言っても、乳児だと下痢と普通便の区別がつきにくいことがあります。便の回数が減り、水っぽい便ではなくなったら登園可能、と考えていいでしょう。
注意点
大人でも感染することがあり、感染すると子どもと同じように嘔吐下痢が強く、一家で大変なことになることもあります。オムツ替えなどしっかり感染対策をして看病してください。嘔吐などのはっきりした症状がなくても、便が少しゆるめであったりお腹が痛いと子どもが訴えてきたりなど、「お腹の調子が悪そうだな」と感じたら、しっかり手袋をしてオムツ替えをするなど、早めの感染対策が重要です。
ロタウイルスにはワクチンがあります。ワクチンができてからロタウイルスによる入院患者さんがとても減りました。定期接種になりましたが、生後早期にしか接種ができないので、出産時や1ヶ月健診時に接種を決めましょう。当院でのワクチン接種の際にご相談いただいても大丈夫です。

溶連菌

症状
発熱とのどの痛み(咽頭痛)がメインの症状。鼻水を伴ったり発疹があったり、という場合も多くみられます。咳はあまり見られません。どの年齢層でも発症しますが、未就学児?小学生くらいの年齢で多くみられます。小学生以上だと、頭痛を訴える子もいます。お腹が痛くなる子もいます。
また、発症後10~14日ほど経過してから「糸球体腎炎」といって血尿や淡白尿がでることがあります。症状が軽快したあとも、注意をしましょう。
原因
「溶血性連鎖球菌」と呼ばれる細菌による感染症で、90%以上がヒトに病原性を有する菌であるA群によるものです。抗菌薬(抗生剤)がとてもよく効き、耐性菌も少ない病気なので、早めに診断をし処置をすることで、早く良くなります。
接触、飛沫感染で伝染し、とても感染力が強い病気でもあるため、症状が出たらすぐに受診をしましょう。受診時に綿棒でのどの菌を採取し、20分もあれば診断が可能です。
治療と対策
先述の通り、抗菌薬(抗生剤)がよく効く病気です。処方された抗生剤をしっかり飲ませてあげましょう。熱のケア

熱が高いときは「氷まくら」などで体を冷やしてあげるのが得策。市販の冷却シートを利用するママも多いですが、熱を下げることに直結するものではありません。さらに、ずれて窒息するというケースも考えられます。子どもの就寝時は使用を控えてください。
のどの痛みがある場合が多いので、うどんやおかゆなど、のどごしの良い食事にすると食べやすいです。食欲もあってのども痛くなければ、普通の食事で大丈夫です。

お風呂は熱が下がって元気であれば、普段通り入って大丈夫です。ただし入浴は体力を消耗するので、熱が高くてぐったりしているのならば、体を拭くだけにするなどして、体力を温存しましょう。
一般的には、抗菌薬投与を開始して24時間経過し、熱やのどの痛み、発疹などの症状が無くなっていたら登園可能と言われています。ただし保育園など施設によって登園基準が違うので、通っている施設に確認をしましょう。
注意点
接触や飛沫で感染するので、手洗い、うがいをしっかりすることが大切。兄弟間の感染を避けるには、寝室を分けマスクの着用の徹底を。

ただ感染力が強い病気なので、家族内感染を防ぐのは実際には難しい場合もあります。兄弟がいるご家庭のママは頭の片隅に置いておき、予定を調整するといいでしょう。

冬の感染症

インフルエンザ

症状
熱、咳、鼻水が主な症状です。他に頭痛、関節痛などが起こることもあります。普通のかぜよりも倦怠感が強く、ぐったりすることが多いです。
原因
インフルエンザウイルスというウイルス感染です。A型とB型に大きく分かれ、さらにA型とB型の中でもいくつか型があります。そのため、毎年かかることもあるのです。
治療と対策
いくつかのインフルエンザ用の抗ウイルス薬が認可されています。代表的なものはタミフル、イナビル、ゾフルーザ、リレンザなどです。普通のクリニックで注射のラピアクタを使うことはほとんどありません。それぞれ特徴や得意分野があるので、相談しながらお薬を決めていきます。また、お薬を飲まなくても自然治癒も可能です。
看病は、脱水症を防ぐためにこまめに水分補給をすること、安静にして睡眠をとることが大切です。子どもが嫌がらなければ、氷枕などで首の後ろ、脇の下を冷やしてあげましょう。

鼻水にウイルスがいるので、鼻水が出たらすすらずにティッシュでかみ、ゴミ箱にすぐ捨ててください。のどが乾燥しないように、加湿器などで寝室の湿度を上げるのもいいでしょう。 また、インフルエンザによって異常行動(突然、部屋を出ようとする、ベランダから飛び降りようとする、興奮状態になるなど)を起こすケースもあります。インフルエンザと診断されてから2日間は、お子さんを1人にしないで見守るようにしましょう。

インフルエンザの出席停止期間について、学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」とされています。
注意点
インフルエンザの検査を受ける場合、受診のタイミングは発症(発熱)してから半日程度経過してからです。たとえば、朝6時に熱が出て3時間後の9時に受診して検査を受けても、陰性の結果が出ることがあります。受診の際、何度の熱が、何時から出たかを伝えることで、インフルエンザの検査をするかどうかを判断して、診断しやすくなります。
また、抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に投与を開始するのが望ましいので、“熱が出てから半日~翌日まで”に受診をし、医師に診断してもらうのがよいでしょう。

おたふく風邪

症状
耳下腺に炎症が起きる病気です。耳の後ろからあごにかけて、赤く腫れあがるのが特徴です。両側が腫れることもあり、片側だけの場合もあります。発熱をともなうこともあり、つばを飲み込んだり食事をすると痛みがあったりもします。

腫れのピークは発症から1~3日後。長くても1週間経つと軽快していき軽症で済むことが多い病気です、しかし、合併症として軽度の髄膜炎である「無菌性髄膜炎」を発症する場合もあります。頭痛や嘔吐の症状が出たら、注意してください。無菌性髄膜炎を発症した場合でも2週間ほどで回復し、後遺症などが残ることもありませんので、あまり心配をしすぎないようにしましょう。

似たような症状が出る病気として感染力のない「反復性耳下腺炎」というのもあります。腫れが1~2日でなくなる場合もあれば、1ヵ月以上持続することもあります。おたふくかぜと比べ、赤みは伴わず感染力もないのが特徴です。
原因
ムンプスウイルスが原因です。そのウイルスの名前をとって「ムンプス」という病名で呼ばれることもあります。飛沫感染のほかにも接触だけで感染する場合もあり、ムンプスウイルスが付着したものに触れた手で口や鼻まわりを触ることで、感染する場合があります。

潜伏期間が2~3週間と長めであることも特徴です。感染したからといって必ず発症するわけではなく、症状が現れないという場合も見られます。そのため、予防がなかなか難しい病気でもあります。
看病と対策
おたふくかぜはウイルス性の感染症のため、特効薬はありません。症状に合わせてのケアをしてあげましょう。腫れた頬が痛いなら冷やしてあげると痛みがやわらぐこともあります。熱がある場合は解熱鎮痛剤を処方すると、いくらか楽になることもあります。
おもに飛沫感染をする病気なので、兄弟がいる場合はマスクの着用をし、過ごす部屋を分けるなどして予防を心がけましょう。接触でも感染する場合があるので、鼻水のついたティッシュの処理やオムツの処理にも十分注意をしましょう。タオルの共用もやめましょう。
おたふくかぜの登園条件は、発症して5日経過していること、かつ、体が元気になっていることです。腫れた耳下腺がしっかり腫れが落ち着くまでは、登園許可がおりないことが多いです。

おたふくかぜには、ワクチンがあります。現在は定期接種ではなく、有料で受ける任意接種です。ワクチンは、1歳を過ぎてから接種することができます。1回接種すればまず感染することは少ないですが、数年後に2回接種するとより安心です。一般的にはMRワクチンと同時に接種することが多いです。日本では任意ですが、2回接種するのが標準とされている国もあります。
注意点
おたふく風邪自体の症状はあまり重症なものはないですが、怖いのは合併症です。 ごくまれですが「ムンプス難聴」と言って、症状が落ち着いてきたころに、片耳が完全に聴こえなくなってしまうことがあります。まれに両耳の場合もあります。他の合併症として、男性の片側の睾丸の機能が低下してしまう「睾丸炎」や、女性の卵巣に炎症が起きる「卵巣炎」になることもあります。これが原因で不妊となることは少ないです、注意が必要です。

おたふくかぜに効果的な予防法は、ワクチン接種のみ。 重い合併症の心配をしないためにも、積極的に予防接種を受けることをおすすめします。定期接種ではなく任意接種なので、お母さんがしっかりと予定してあげてくださいね。

はしか(麻疹)、風疹

症状
「麻しん」は、「はしか」と呼ばれることも多い病気です。主な症状は、発熱、咳、鼻水、発疹など言葉で書いてしまうとただの風邪のようですが、風邪と比べて症状が重いのが特徴です。見るからに重症である感じがあり、全身がむくみ、グッタリとします。

発症するとまずは、発熱、咳、鼻水だけの症状の「カタル期」と呼ばれる時期が数日あり、その後一旦熱が下がったように感じますが再度発熱します。そして、赤く小さな発疹が広範囲に出るのが特徴です。

肺炎・脳炎などの合併症も多く、感染症の中でも致死率が高い病気ですが、現在はワクチン接種が義務付けられているため、感染しても症状が軽く済むことが多いようです。これを「修飾麻しん」と呼ばれます。日本では1歳になるとワクチンの接種が義務付けられています。

「風しん」は、はしかに症状がとても似ていますが、三日という短期間で軽快することから「三日ばしか」とも呼ばれます。はしかに比べ重症である感じは少なく、発熱、発疹、リンパ節腫張が大きな症状です。発熱がない場合もあり、「不顕性感染」といって、ほとんど症状が出ない人もいます。

ただし、妊娠中の女性がかかってしまうと、知的障害、心臓病、難聴、目の病気、成長障害など赤ちゃんに重い障害が出る可能性があります。妊娠が初期であるほど重い影響が出る傾向があるので、将来妊娠を希望していて予防接種をしたことがない方、そして男性も予防接種を受けるようにしましょう。
原因
麻しんも風しんも、いずれもウイルスによる感染症です。麻しんは麻しんウイルス、風しんは風しんウイルスが原因です。風疹ウイルスは飛沫感染ですが、麻疹ウイルスは空気感染と言ってとても感染力が強いウイルスです。部屋をわけても感染することがあるので、手洗いやマスクなどの予防だけでは、防ぎきることがなかなか難しい病気です。
治療と対策
基本は対症療法飲みです。麻疹は症状が重症化することが多いので、入院で全身管理を要することがあります。
熱のケア 水分接種の方法

登園の目安:麻しんは「解熱して3日経過したら」、風しんは「発疹がなくなったら」
麻しんは感染力が強いので、完全に解熱してからも一般的には3日間くらいは登園できません。
一方で、風しんの場合は発疹が消えたら登園できる場合があります。いずれにしても、登園許可証が必要なことが多いです。
注意点
麻しんは、MRワクチンの接種が義務付けられたことにより、現在の日本ではほとんど発症を見ることがなくなりました。海外からの感染者で一時流行があることはありますが、ワクチンを接種している子でしっかり症状が出るほど感染した報告はほとんどありません。ほとんど見られなくなった分病気の恐ろしさも知られなくなりましたが、致死率がとても高い病気です。しっかりワクチンで予防したいものです。
風しんで気をつけたいのは、とにかく妊婦さんへの感染です。妊娠中の女性にかかると赤ちゃんに重い障害が残ることが心配されます。MRワクチンを接種しているお子さまであれば、感染することはまず心配する必要はないでしょう。これから生まれてくる子に障害が出ないようにするためにも、子どもも大人もワクチン接種がとても重要となる病気です。成人男性は摂取率が低い傾向にあり、成人男性から妊婦さんに感染してしまうこともあります。行政からの補助があるワクチンですので、積極的に予防接種を受けましょう。

水痘(水ぼうそう)

症状
いわゆる水ぶくれの状態の、特徴的な水を含んだ発疹が出るのが主な症状です。約2週間の潜伏期間後に、中心に水疱を伴った周囲が赤い発疹が体じゅうにたくさんできます。かゆみが強いのも特徴です。 発熱を伴うことも多くありますが、熱がまったく出ないという場合もあります。一部の人では、重症化することもある病気です。

発疹は最後はかさぶたになりますが、まれにあとが残ってしまう場合もあります。
原因
水痘ウイルスが原因です。ウイルスは、鼻水や咳、水疱がつぶれた際にでる液体などに潜んでいます。そのウイルスを吸い込んだり、触ってしまったりするだけで感染してしまうこともあるという、とても感染力の強いものです。そのため、保育園などの集団生活ではアッという間に広がってしまいます。
治療と対策
発疹のかゆみが強い病気なので、子どもは引っ掻いてしまいがちです。病院を受診するとかゆみ止めの薬を処方されますが、塗り薬以外にもなるべく皮膚を掻かないように工夫することも大切です。

長袖長ズボンにして手が届かないようにしたり、部屋の温度を涼し目にしてあげると少し痒みが緩和されることがあります。また、出された軟膏の他にも、保湿剤で皮膚を乾燥から守ることも効果的です。

そうはいっても、かゆかったら引っ掻いてしまうのが子どもというもの。その場合を考えて、つめを短く切って清潔にしておきましょう。
[解熱のために自宅でできることは?]
熱が出た場合の対策は、普通の風邪と同じです。嫌がらなければ体を冷やしてあげましょう。食欲がない場合は、無理して食べなくても大丈夫。脱水にならないように、水分だけはこまめに摂るように心がけましょう。

水ぼうそうには、ワクチンがあります。昔は1回接種で大丈夫とされていましたが、最近では、1~2歳の子どもは定期接種として受けられるようになりました。1歳を過ぎてから1回目の接種を、1回目の接種後3ヵ月以降に2回目を接種するのがおすすめです。

水痘は抗体が上がりにくいため、2回予防接種をしてもかかってしまうという場合があります。ですが予防接種をした場合はしていない場合よりずっと症状が軽く、発疹の数もとても少なく済むことが多いので、決められた時期に定期接種をするようにしましょう。
[予防接種をする前に、周りに感染者が出たら]
前述した通り、水痘ウイルスは感染力が必要に高いものです。予防接種をしていないタイミングで周りの人がかかってしまったら、早めに小児科に相談することがオススメです。
[いつ登園できる?]
登園の目安は「全部の発疹がかさぶたになったら」

水ぼうそうの発疹は、最後にからからに乾いて、かさぶたになります。かさぶたになった発疹は感染力がないので、全部の発疹がかさぶたになったら登園可能です。 登園許可証が必要な場合が多い病気なので、保育園の指示に従いましょう。
注意点
水ぼうそうは、ここ数年ワクチンが定期接種化されたことで、患者さんの数がグッと少なくなりました。 多くのお子さんは発疹が出て熱が少し出て終わってしまいますが、一部の方では死に至るくらい重症化することがあります。

感染症ではない熱の病気

川崎病

症状
下記の経過があれば、川崎病の可能性があります。
①発熱
②首のリンパ節が腫れる
③イチゴ舌(舌が赤くてぶつぶつができる)
④手足の指が赤く腫れる
⑤発疹
⑥目の充血
⑦BCGの接種部位が腫れる
BCGをうったところが腫れやすく、舌や喉や唇も真っ赤になるのが特徴です。 発疹はプツプツとした発疹ではなく、数センチ大の赤みがあるような発疹です。 さらに普通の風邪だと熱が高くても元気にしていることもありますが、川崎病はぐったりしてしんどさでじっと辛さを耐えているような状態になります。
原因
はっきりとした原因はわかっていません。感染症説、アレルギー説、自己免疫疾患説など様々な説が言われていますが、確定していません。
ただ、感染症といっても、近くに川崎病の人がいたからうつるかも、ということはありません。
治療と対策
川崎病の診断がつくのは発症してから3-4日経ってからと時間が経過していることが多いです。
診断されると自宅でケアをするというよりは、入院治療となります。一般的には1週間から2週間程度での退院となることが多いですが、症状の経過によって大きく変わります。家族感染の危険はないので川崎病と診断されれば、面会は可能です。
川崎病は診断が遅れると重篤な合併症、後遺症を残すことがあります。5日以上の発熱があった場合は、もしお子さんが元気な様子であっても、まずは受診することが大切です。
注意点
川崎病の心臓の合併症が残ると、一生薬を飲み続けたり、体育などの運動制限が必要になることがあります。発熱が続くときは元気でも一度受診しましょう。川崎病は、小児特有の病気なので、小児科専門の医師に診てもらうことをおすすめします。

アレルギー疾患

喘息

喘息は感染症ではなく、アレルギー性疾患です。何かしらのアレルゲン(アレルギーの原因物質となるハウスダストや花粉など)を吸うことで気管支が狭くなり「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった音のする呼吸になるのが特徴です。

喘息は息を「吸う」ことよりも「吐く」ことが難しくなるため、息を吸う時間よりも吐く時間が長くなります。そのため、見た目にも分かるほど肩を上下させるような呼吸になったり、鎖骨の上やろっ骨の下がペコペコとへこむような呼吸になったりします。

2歳前後の赤ちゃんまでは「乳児喘息」といって、アレルギー体質がなくても風邪などをきっかけに喘息のようなゼイゼイとした呼吸をくり返すことがあります。気圧などもに影響されやすく、季節の変わり目で調子が悪くなることが多いです。

3-4歳以降の子の場合、アレルギー体質のため喘息になる子が多くなってきます。アレルギーは主にホコリやダニの死骸や花粉などが原因になります。さらに、風邪がきっかけとなり、悪化してしまう場合もあります。

乳児喘息は2歳くらいまでの赤ちゃんに特徴的な症状なので、体が大きくなり、気管支が強くなると治ります。

アレルギー体質の場合は軽くなることはあるものの、体質自体は治るものではありません。我が子の体質と上手に付き合うためには、発作を起こさないような対策が大切です。適切な治療をすれば発作が出ずに過ごすことも可能なので、喘息と診断されたら定期的な通院が重要です。

ホコリなどで咳が出やすい体質であれば、こまめに掃除をして清潔な環境を保ちましょう。防ダニ効果のある高密度シーツを使ってみてもいいでしょう。

季節で発作が出やすい場合は、季節がくる少し前にご相談ください。

基本発熱しない病気なので、元気があれば登園可能です。しかし熱がないからとつい保育園に連れていきがちですが、疲労で悪化する事があるので、無理して連れていくとさらに悪化するおそれがあります。
夜も眠れないほど苦しそうにしていたり、食欲がないなどは重症のサインです。受診をして呼吸状態を正しく判断すること、無理せず家でゆっくりすることも大事です。

喘息は長く付きあっていかなくてはならないアレルギー性の病気です。大事なのは「喘息発作が出たときにどう対応するか」ということよりも、「なるべく発作を起こさないように体調管理していく」こと。体質は変えることはできませんが、適切な管理で発作を起こさずに過ごすことはできます。定期的に受診して強い気管支を作っていきたいものですね。